松崎 浩巳先生
医療法人社団苑田会 苑田第3病院内 東京脊椎脊髄病センター 顧問
Dr. PROFILE
資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会外科名誉指導医、医学博士
変形にもいろいろ種類があり、正面から見て横に傾くのが側弯症(そくわんしょう)、真横から見て頭が垂れ下がるようになるのが首下がりです。また、腰椎部で体幹が前に倒れたようになるのが後弯症(こうわんしょう)で、これが一般的に「腰曲がり」と呼ばれるものです。後弯症は、大きく2つに分けられます。ひとつが、加齢のために多くの椎間板がつぶれて狭くなり、前に傾いていく変性後弯症(へんせいこうわんしょう)です。後方には関節があるためつぶされにくいのですが、前方は支えるものがないので、つぶされやすく、また、老化により椎間板がつぶされ前に傾きやすくなるのです。もうひとつが、骨粗しょう症により知らないうちに脊椎の圧迫骨折が起こり、椎骨の前側がつぶれて曲がっていく外傷性後弯症です。これらはいずれも高齢の人に多い病気です。さらに高齢になると腰の筋力が弱くなり、前に倒れた体幹を後ろから引っ張る力が弱くなることも要因のひとつです。特に、パーキンソン病(手足の震えや筋肉のこわばりなど、運動機能が障害される病気)の方では、腰や背中を後ろから支える筋力がうまく働かなくなり、後弯はどんどん強くなります。
腰曲がりは、60~80歳代の女性に圧倒的に多い病気です。男性より女性に多いのは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少が関係するといわれています。エストロゲンは、骨の新陳代謝に際して骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。しかしながら、閉経に伴って女性ホルモンの分泌が減ると、急激に骨密度が減少し、知らない間に圧迫骨折を引き起こし、強い腰曲がりとなるケースが少なくありません。それ以外でも、農家やお豆腐屋さんなど、常に腰を曲げているような職業の方も発症しやすい病気です。