背骨治療の専門医に聞いてみました
背骨の病気は専門医に相談を!手術など幅広い治療選択肢があります
背骨は、脊椎(せきつい)と呼ばれる骨と、脊髄(せきずい)と呼ばれる神経、それから椎間板や靭帯などの組織でできています。背骨の病気に共通するのは、この脊椎や脊髄、周りの組織のおかれた環境が悪い状態にあることです。様々な原因によって神経が圧迫され、その神経が対応している部位に痛みやしびれを生じます。
背骨の病気になった場合の治療は、お薬やリハビリ、ブロック注射といった手術以外の治療(保存療法)から開始するのが一般的です。保存療法を尽くしたうえで、残存する症状に対して患者さんがどれくらい日常生活に困っており、今後どのような生活を希望されるかお聞きして手術が適応となるかどうかを決めます。
ただし神経がひどく傷むと、手術をしても神経の損傷部分は良くはなりません。あくまで症状の進行を予防するための処置になります。そのため、麻痺のような明らかな神経の損傷が疑われる場合は、できるだけ早期に手術を検討されることをお勧めします。
椎間板は骨と骨をつなぎ、衝撃を和らげるクッションのような役目をしています。その一部が出てきて神経を圧迫し、腰やおしりの痛み、太ももやふくらはぎといった下肢のしびれが起こるのが腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎椎間板ヘルニアは保存療法で改善されることも多いですが、筋力低下や歩行障害など症状がひどい場合には手術が選択肢となります。
椎間板ヘルニアの手術では、ヘルニアを摘出して神経の圧迫を取ります。内視鏡を使った内視鏡下椎間板摘出術(MED)では、従来の方法と手術内容は基本的に同じですが傷口を小さくできます。まず20mmほど皮膚を切り、そこに直径18mmの筒を入れて強い光を当ててカメラを入れます。カメラを動かしながら捉えた中の様子をモニターに映し出し、それを見ながら手術を行うことができます。内視鏡のカメラは拡大、鮮明化ができ、奥まで見ることが可能です。従来の手術より視野を得やすいだけでなく、切開する組織を少なくできる(侵襲を抑えられる)というメリットがあり、術後早い回復を目指せることも特徴です。
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は神経の通り道である脊柱管が狭くなる病気です。狭窄が起こる理由はさまざまで、加齢により椎間板が傷んで膨らむ(膨隆)、椎間板の傷みで高さが減少することで腰椎の後方の黄色靭帯がたわみ、それによって靭帯の厚みが増す(肥厚)などがあります。症状としては、下肢の痛みやしびれ、続けて歩行すると足がしびれたり重だるくなってくる間欠性跛行(かんけつせいはこう)があります。
内視鏡下椎弓切除術(MEL)が行われています。後ろ側から20mmほど切開して内視鏡を入れ、周りの筋肉を剥離し、神経の通り道にある椎弓(ついきゅう)という骨の一部を削ることで神経を後ろに逃がします。これによって痛みが落ち着く患者さんも少なくありません。
椎間板ヘルニアの場合、従来は前方固定術といって首の前側から入りヘルニアをとる手術が主に行われていました。取り除いた後のスペースには骨を移植し、前側から金属でできたプレートを当てて固定します。手術時間も短く出血も少ないなどのメリットがあるのですが、一つの椎体間を固定するとその前後の骨にストレスがかかり、術後10年、15年後に手術の合併症として隣接椎間障害が起こる可能性があります。その点、MELであれば固定を行わずに神経の圧迫を取り除けるため、術後の合併症のリスクを回避できるという利点があります。