背骨治療の専門医に聞いてみました
肩から上肢にかけて痛み・しびれを生じる「頚椎症性神経根症」多くの方が保存治療で軽快しています。
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CHAPTER01神経の通り道が狭くなることで起こる『頚椎症性神経根症』
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CHAPTER02『頚椎症性神経根症』で手術を受けるケースとは?
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CHAPTER03手術後のリハビリ・退院後の生活について
多くの場合、内服薬などの保存治療で症状が軽くなり、いったん治まると再発は少ないと いう傾向があります。保存治療でどうしても改善しないときは、手術を受けることで痛み をしっかり取り除けることも多々あります。
諸岡整形外科病院・大迫浩平先生に『頚椎症性神経根症』の詳細をお伺いしました。
『頚椎(首)』の中心部には『脊柱管』と呼ばれる脊髄の通り道があり、そこから左右それぞれ8 本の神経が枝分か
れして、椎間孔という骨と骨の隙間を抜けて首から上肢にかけて伸びてい
ます。その枝分かれした部分は『神経根』と呼ばれています。
『頚椎症性神経根症』は、頸椎が変形し、この神経根を圧迫したり刺激し
たりすることで起こる疾患です。
年齢を重ねるうちに、頸椎で骨同士のクッションの役割を果たしている『椎
間板』が徐々にすり減ったり変形したりし、神経の通り道を狭めてしまう
という状態が起こります。それが原因となって、肩甲骨あたりから上肢に
かけて、しびれ・痛みといった症状を引き起こすというものです。
発症するのは中高年以降の世代ですが、特に症状が出やすいのは、40 代~ 60 代の方です。
男女比でみると、男性の方が多い傾向がうかがえます。
なお、頚椎症性神経根症はあくまでも加齢で自然に起こってくる変性によるもので、事故やスポーツによる外傷な
どが直接的な原因ではない……という点も特徴です。
首を横にひねったりぐっと後ろに曲げたりしたときに、
肩甲骨から腕にかけて違和感(ピリッとするような痛み
やしびれ)がある場合は、頚椎症性神経根症の可能性が
あります。
首の筋力が落ちると、どうしても頸椎・椎間板への負担
が増え変性が起こりやすくなるので、それを防ぐために
は首の筋肉トレーニングやストレッチは有効です。
もともと加齢によって徐々に進行していくものなので、
一時的な取り組みというより、長期的に「首の筋力を落
とさない」と意識することが大切です。と言っても、「首の筋トレ」にピンポイントで取り組むのは難しいかもし
れないので、リハビリの先生など、専門的な知識がある人のアドバイスを受けることをお勧めします。
日常的な動作では、無理な姿勢を長時間続けていると椎間板の変性が進むこともあるので、できるだけ正しい姿勢
を意識しましょう。
肩や腕のしびれが気になったり、強く痛みが出たりし、日常の動作や仕事に差し支えるという場合は、整形外科を
受診するタイミングと言えます。
行われますか?
保存療法と手術治療があります。
神経に働きかける鎮痛剤の内服をしていただいたり、リハビリを行うことで
多くの人は症状が軽快していきます。痛みが強い人には、圧迫されている神
経のところに直接炎症止めや痛み止めを打つ『神経根ブロック注射』と呼ば
れる方法もあります。一度軽快すると再発しないという方も多く、保存療法
で改善が望める疾病と言えます。
しかし、もちろん個人差はあり、保存治療を続けても効果が出ないという人もいらっしゃるため、そういう患者さ
んには手術という選択肢があります。