岡崎 洋之先生
三愛会総合病院 整形外科診療部長
資格:日本整形外科学会整形外科専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、難病指定医、身体障害者福祉法第15条指定医師、小児運動器疾患指導管理医師
尾又 腰の痛みや足のしびれは、背骨の疾患が元になっているケースが多々あります。背骨のしくみを説明すると、背骨は首からお尻まで連なっていて中には脊柱管(せきちゅうかん)という脊髄(せきずい)が通るトンネルのようなものがあり、椎骨(ついこつ)・椎間板(ついかんばん)・椎間関節(ついかんかんせつ)・黄色靭帯(おうしょくじんたい)などに囲まれています。脊髄は、5つある腰の骨の1番上(第1腰椎)の位置で馬尾(ばび)となり、さらに神経根(しんけいこん)として背骨の外へ向かっています。一般的に、脊髄、馬尾、神経根はいずれも神経と呼ばれます。
何らかの要因により、馬尾や神経根の通りが狭くなり、神経が圧迫されると、太ももや膝下にしびれや痛みとして現れてきます。これが腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)です。しばらく歩くと痛みやしびれが生じ、少し休むとまた歩けるようになるものの、ふたたび歩くとまた痛みやしびれが生じるような間欠性跛行(かんけつせいはこう)が発生することもあります。
岡崎 多くは、加齢に伴う組織の変性によるものです。神経の近くにある椎間板がでっぱったり、脊柱管の後ろにある黄色靭帯が厚くなったり、椎骨をつないでいる椎間関節が変形することで神経が圧迫されます。
また、骨の並びがずれる腰椎変性すべり症(ようついへんせいすべりしょう)は、腰部脊柱管狭窄症を引き起こす病気の一つです。ほかにも、正中にはみ出した腰椎椎間板ヘルニア、骨粗しょう症による椎体骨折なども原因となりえます。腰部脊柱管狭窄症は60代以上の高齢者に多いといわれています。
尾又 腰部脊柱管狭窄症は、神経を圧迫する場所によって、馬尾型、神経根型、混合型の3つに分けられます。脊柱管の中心部が圧迫され、両足のしびれや痛み、冷感などの感覚異常、排尿障害が起きるのは馬尾型です。一方、馬尾から分岐した神経根が圧迫され、片側のお尻から足にかけて、しびれや痛みを生じるものを神経根型といいます。混合型は、馬尾型と神経根型の両方の症状が起きるものです。
岡崎 腰椎変性すべり症は、横から見たとき骨が階段状に前後にずれた状態になるもので、それにより神経の通り道が細くなり、結果として多くの場合、腰部脊柱管狭窄症を合併します。腰椎変性すべり症では、足の痛みやしびれに加えて、腰痛を訴える方も多いです。腰を繰り返し曲げ伸ばししたり、重いものを持ち上げたりすることで、症状が強くなることがあります。加齢に伴って背筋が落ちたり、椎間関節が痛むことで生じる病気であり、60代以上の女性によくみられます。
岡崎 腰・足の痛みやしびれ、間欠性跛行などがあるようでしたら、まずは一度、脊椎(せきつい)を専門に扱っている病院への受診をお勧めします。10分間連続して歩けない、長く台所に立っていられない、周囲の歩くスピードについていけないなどが受診の目安といえるでしょう。さらに、安静時にも痛みやしびれが出るようであれば、症状が進行している可能性があります。
尾又 受診時には、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査とともに、神経がどこでどの程度圧迫されているかを医師が直接診察し、治療方針を決めていきます。よくよく調べてみると、中には背骨ではなく足の動脈硬化が原因だったというようなケースもあり、正しい診断・治療のため、やはり早めに整形外科を訪ねてほしいと思います。