背骨治療の専門医に聞いてみました
腰の痛み・足のしびれは背骨の神経が圧迫される腰部脊柱管狭窄症が原因かもしれません
現在、日本人の5人に1人が悩みを抱えるといわれる腰痛ですが、検査をして原因が特定できるもののうち代表的なものが腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)や腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア、腰椎圧迫骨折(ようついあっぱくこっせつ)です。
腰部脊柱管狭窄症は、加齢に伴う病気で高齢の女性に多いです。椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にある椎間板が飛び出し神経に当たるもので30代以上に多いですが、中学生など若い世代でも発症することがあります。背骨の一部が骨折して潰れる圧迫骨折は、高齢の女性を中心に、しりもちや転倒などで起こります。重度の骨粗しょう症では、咳やくしゃみで発症することもあります。
また、まれではありますが、腰痛や足のしびれは脳梗塞や糖尿病、足の動脈硬化、脊椎の細菌感染やがんの骨転移でも起きるため、その見極めはとても重要です。
外来の患者さんに問診すると、以前から腰痛や足のしびれを自覚していたものの、安静にしたり、市販の痛み止めを飲んだら改善していたという方がほとんどです。症状の悪化と軽快を繰り返すうちに、だんだん改善しなくなったため、整形外科を受診されているようです。
しかし、症状を気にしながら数カ月間など長期にわたって様子をみるより、もっと早めの受診をお勧めします。早期受診により、減量や姿勢の指導、リハビリ体操へのアドバイスを受け、日常生活習慣を見直すことで症状の悪化を防げることは多々あります。また前述の通り、脳梗塞やがんなど他の病気が原因になっていないかを確認するためにも、精密検査は大切です。
足首が上がりづらい、動かしにくいという場合、麻痺が起きている可能性がありますので、やはり一度早めに整形外科を訪ねてほしいと思います。神経には感覚神経と運動神経があり、感覚神経が圧迫されると痛みが出るのに対し、運動神経では痛みをあまり感じないまま、麻痺が進みます。痛みが弱いため発見が遅れ、そのままにしていると気づかないうちに悪化し、改善しにくくなることがあります。
麻痺は、患者さん自身ではなかなか気づきにくいものですが、歩いているとスリッパがすぐに脱げる、平地歩行でもつま先が引っかかるなどがないかチェックしてみてください。歩いているときに膝崩れするといった症状も要注意です。
腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状は、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)と間欠跛行(かんけつはこう)です。坐骨神経痛では、おしりから太ももを通ってふくらはぎまで、電気が走るような痛みを感じます。ひどいときは、足の甲や裏まで痛みが広がることもあります。間欠跛行は、足の痛みやしびれ、脱力により、歩行が休み休みになってしまうものです。座っていたり前かがみのときには症状は出にくく、買い物カートを押したり、自転車をこいだりすることは休みなく続けられます。一方で、立ったり歩いたりする動作については、悪化すると連続して50メートルも歩けなくなったり、立っているだけでも足がしびれたりして、頻繁に休憩が必要になります。