背骨治療の専門医に聞いてみました
背骨の病気は専門医に相談を!手術など幅広い治療選択肢があります
頚椎症によって脊髄が圧迫される病気です。脊髄は、協調運動(両手、手と足、目と手など複数の部位を別々に動かす運動)を行う上で欠かせない神経です。その脊髄が傷ついてしまうと、箸でものをつまむ、小さい文字を書くといった細かい運動がうまくできなくなります。足も同様で、素早い動きができなくなりバランスも悪くなってきます。このような症状がある場合には日常生活を続けることは難しく、手術が適応となります。
手術では、首の後ろ側を切開した後、椎弓という骨を切って開き、開いた椎弓の間に人工でできた骨(人工骨)を挟みます。こうすることで脊柱管が広がり、神経への圧迫がとれます。
腰椎すべり症には、変性すべり症と分離すべり症があります。変性すべり症は、加齢などで骨の一部が前にずれてしまう状態です。症状としては、狭窄が起こるため下肢の痛みやしびれ、酷ければ筋力低下が起こります。分離すべり症は、子どもの頃の疲労骨折などがきっかけで骨の一部が分離してしまい、そこからすべりが進行したものです。腰椎椎体間固定術は、不安定化した背骨を安定させるために固定する手術です。まずは圧迫の原因となる椎間板などを切除します。そのスペースには高さを確保するために、ケージとよばれる人工物を入れます。ケージにはご自分の骨を詰めることで、その上下の骨との骨癒合を促します。さらに金属でできたスクリューやロッドを用いてすべりを整復し固定します。
成人脊柱変形は、いろいろな要因で背骨のバランスが崩れ、脊柱が曲がってくる病気です。加齢性の変化によって椎間板が偏った潰れ方をしてくると、背骨がねじれているような状態になります。最近多いのは、横から見た時に、本来は前に弯曲しているべき腰椎が後ろに弯曲することによって足首や膝、股関節などが悪くなるケースです。腰痛や神経痛などの症状が現れることも少なくありません。軽度な場合は保存療法で様子を見ますが、改善されずに日常生活に支障を来たしている状態が何年も続いているような、慢性化している場合は手術が適応となります。
矯正固定術では、ケージやスクリュー、ロッドを用いて骨の並びを矯正して固定を行います。前側から行う前方と後ろ側から行う後方の2種類あります。後方固定術では、神経を傷つけないように避ける必要があり、入れられるケージの大きさには限りがあります。これに対して、前方固定術は、後方と比べて手術時間が短く、筋肉の切開する量も抑えられるので出血量が少ないです。横腹辺りから入るので、神経を避ける必要はなく大きなケージを入れられます。
椎体という背骨の前側の部分が骨折してしまう病気です。骨粗鬆症により骨の強度が低下し、比較的軽微な外傷で起こります。基本的には保存療法として、コルセットを装着したり安静にしたりします。潰れた椎体を元に戻すことはできないため、それ以上潰れないよう予防するわけです。これによって骨癒合が得られたら痛みは楽になりますが、潰れていくと骨の並びや配置が悪くなります。骨粗鬆症性椎体骨折の場合、外傷の起点があっても無くても、一定の割合で骨がくっつかない人がいます。すると骨折部の骨の癒合が十分に得られない偽関節(ぎかんせつ)となって痛みがずっと続く場合があります。そうした方や痛みが強い方に対して経皮的椎体形成術を行います。
手術では、風船を付けた筒を潰れた骨の中に入れて風船を膨らませ、潰れてしまっている骨を持ち上げます。その中に骨セメントを充填し固定すると、高さが戻りグラグラと動かなくなります。痛みの強い方、長く痛みが続く方、偽関節で骨が癒合しない方にも有効です。