背骨治療の専門医に聞いてみました
腕や脚のしびれは黄色信号です悪化する前に専門医に相談を
頸椎症には、脊髄が圧迫されている「頸椎症性脊髄症」と脊髄から枝分かれた神経根が圧迫される「頚椎症性神経根症」という2 つの病態があります。後者の神経根症によってしびれなどの症状がある場合は手術を行うこともありますが、主な症状が痛みの場合は、消炎鎮痛剤や神経障害性疼痛薬などの内服薬や、超音波を使い痛みのもとになっている神経根に局所麻酔薬を注射し痛みを抑える(エコー下神経根ブロック注射)方法など保存治療で改善する方が大多数です。
一方の脊髄症は巧緻障害だけでなく、進行すると尿が出にくくなったり尿が出なくなるといった膀胱直腸障害など取り返しのつかない状態なることがあるので、発見した時点で早期の手術が必要となることがあります。
従来の脊髄症の手術は、首の後ろを10~15cmほど切開して筋肉を切りながら頸椎に侵入し、骨を切ったり削ったりして狭くなった脊髄の通り道(脊柱管)を広げ症状を緩和させる手術(椎弓形成術、椎弓切除術)が行われていました。しかし、近頃注目されているのが内視鏡手術です。頸椎症性脊髄症で行われている内視鏡手術は、筋肉を切らずに避けながら直径16㎜ほどの内視鏡レトラクターという特殊な器具を病変部まで挿入します。そのレトラクターの中に、カメラや手術器具を入れて、神経を圧迫している骨や靭帯を切除したり取り除いたりします。
従来の手術法はどうしても傷口が10㎝程度と大きかったのですが、内視鏡手術では、傷の大きさは約2.5㎝程度と小さく抑えることができるようになっています。また、従来法は筋肉を大きく切る必要がありますが、内視鏡手術は筋肉の切開が少なく侵襲の少ない手術を行うことができます。そのため、術後の痛みが軽減しているだけでなく、従来は3週間程度の入院期間が必要だったのですが、術後3~5日で退院できるので早期社会復帰が望めるということは患者さんにとって大きなメリットではないかと思います。