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背骨治療の専門医に聞いてみました

年齢を理由に足腰の痛みやしびれを諦めないで腰部脊柱管狭窄症の治療選択肢は広がっています

中山 美数先生
医療法人社団白翔会 千葉白井病院
整形外科 脊椎・脊髄病センター長
Dr. PROFILE
専門:脊椎脊髄疾患
資格:日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医
Q
あまりに高齢だと腰部脊柱管狭窄症の手術は難しいですか?

従来型の手術の場合、切開が大きく出血量が多いなど身体へかなり負担がかかる手術だったので、70代以降ともなるとリスクを考慮して手術を避ける傾向にありました。しかし、低侵襲な手術が普及してきたことで、年齢を理由に手術の可否を決める必要はなくなってきています。患者さんの中には、「私のような年齢だともう手術はできないですよね」などおっしゃる方もいます。しかし、手術を受けられるくらい全身状態に問題がなかったり、持病があっても薬などでコントロールできたりすれば、80代、90代でも手術を受けることができます。主治医とよく相談してご自身に合った治療法を選択してほしいと思います。

Q
術後のリハビリや退院後の暮らしで気をつけることについて教えてください。
水中歩行
水中歩行
水中歩行
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内視鏡による低侵襲手術の場合、リハビリは翌日から始めます。午前中に手術が終了すれば、当日中に開始することもあります。傷の痛みがない範囲で、椅子から立つ、座る、歩くなどの日常生活動作を練習し、退院後の再発を防ぐための姿勢や動きを身につけます。入院期間は3、4日程度が目安ですが、高齢の方だともう少し回復に時間を要し1週間ほどかかることもあります。術後しばらくは、腰をひねる運動は避けるようにしてください。ゴルフやテニスなどの趣味・スポーツの再開は、医師や理学療法士の指導のもと、体幹トレーニングを十分に行なって体幹が安定してから行うようにしてください。今まで慣れ親しんできたスポーツであれば、術後2カ月~半年もすれば行えるようになり、特に動きに制限はありません。ただし、痛み・しびれが改善したからといって、極端に負荷が大きい運動や激しく飛び跳ねる競技を新たに始めるのは再発のリスクが高いこともあり、医学的にはお勧めできません。
一方、有酸素運動は積極的に行ってほしいと思います。水泳や水中歩行、ウォーキング、体力がある方ならジョギングなどに取り組んでみましょう。身体を動かすことで筋力低下や骨粗しょう症を予防できますし、合わせてダイエットに成功すれば腰にかかる負担が軽減されます。

Q
足腰の痛みやしびれに悩む方へメッセージをお願いします。

腰部脊柱管狭窄症は昔から多くの方が悩む病気ですが、その治療方法はめまぐるしく進化しています。脊柱管狭窄症に悩んでいても、年齢を理由にきちんと治療に向き合わないというのは残念なことです。痛みやしびれがあると徐々に行動が制限され、引きこもりがちになり筋力が衰えると寝たきりにもなりかねません。痛みやしびれなど気になる症状があれば、まずはお近くの整形外科を訪ね、早めの診断を受けてください。狭窄が認められた場合、軽度であれば保存療法で改善を期待できますし、重度であっても今日では高齢者でも手術を受けることで軽減が期待できます。治療によって症状が軽快し、活動量を増やすことができれば健康寿命の延伸にもつながるでしょう。良い循環で過ごせるよう、専門医に相談し、ご自身に合った治療に臨んでほしいと思います。