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背骨治療の専門医に聞いてみました

背骨が曲がる、腰が曲がる変性後弯症(腰曲がり)は、病気です。
歳のせいとは限りません。脊椎専門医に相談を

松崎 浩巳先生
医療法人社団苑田会 苑田第3病院内 東京脊椎脊髄病センター 顧問
Dr. PROFILE
資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会外科名誉指導医、医学博士
Q
腰曲がり(変性後弯症)にはどのような治療方法がありますか?
股関節を後ろに伸ばす運動
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手術をせずに回復を目指す保存療法と、手術療法の大きく2つに分けられます。仰向けに寝て腰に枕などを入れたとき、簡単に後弯が伸びてまっすぐになるようであれば、保存療法で治る可能性があります。保存療法の中心となるのがリハビリテーションで、脊柱の骨そのものに変形がなく、腰背部の筋力が弱くなって発症している腰曲がりであれば有効です。背中や腰、お尻の筋力強化を数カ月間続けることで腰痛が和らぐなど、徐々に改善していくことがあります。また、股関節で体幹が前に倒れてしまうような腰曲がりであればお尻の筋肉(大殿筋)(だいでんきん)強化も欠かせず、あわせて股関節を後ろに伸ばす運動も必ず行います。

リハビリは非常に大切ですが、後弯そのものを治す効果は十分ではなく、あくまで筋力を強化することで症状を和らげるものです。また、腰椎のコルセット療法は、腰痛にはやや有効ですが、後弯矯正には効果がありません。

Q
手術はどのタイミングで考えた方いいでしょうか?
重度の腰曲がりのレントゲン(側面)
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腰曲がりが強く、容易に脊柱の矯正ができない柔軟性のない後弯症や、圧迫骨折が元になり脊柱が変形している場合、リハビリの効果は期待できません。根気よく続けていればそのうち良くなるという病気ではないため、その見極めは大切です。リハビリを3カ月程度行っても効果がなければ、手術を考える目安になるでしょう。
具体的には、脊椎の椎体の変形があり、腹部の圧迫症状がある、歩行がつらいなどの場合、手術が適していると考えています。また、パーキンソン病を合併している場合は、早めの手術療法が望ましいでしょう。腰曲がりで、年齢よりも老けて見えることに悩んで引きこもり気味になっている方も、手術で矯正することにより、精神的苦痛が和らぐことが少なくありません。
また、「いずれは手術を受けるつもりだけど、もう少し待ってから」という引き延ばしはあまりお勧めできません。症状があって、60代での体力があるうちに手術を受ければ術後の回復も早いですが、様子を見るうちに70代、80代となって後弯がさらに進んでくると、手術の難易度が増し、入院期間も長くなります。いずれは手術すると決めているのであれば、できるだけ早い段階で受ける方が良いと思います。
腰曲がりが強くても痛みがなく、内臓の不調もない、整容もご本人があまり気にされていないケースも中にはあります。その場合は、もちろん無理に手術する必要はなく、様子を見て良いでしょう。

Q
腰曲がり(変性後弯症)の手術について詳しく教えてください。
腰曲がりの程度と脊柱の柔軟性により、手術の方法は変わってきます。
脊柱に柔軟性があり、簡単に矯正できるような軽症例では、腰の後ろから手術をします。胸椎の下から仙椎までビスとロッドで曲がりを正常になるように矯正し、矯正した脊椎に骨を移植して骨癒合させます。手術時間は一般的には3~4時間程度です。
脊柱の柔軟性がなく、腰曲がりが強い重症例では、脊椎の一部を斜めに切って切除し、後方に矯正した後、ビスとロッドでその姿勢を維持する脊椎骨切り術があります。ただ、この方法は出血も多く難しい手術法といえます。
そのため最近では、腹部の横を5センチ程度切開し、内視鏡様の筒を脊椎の横に挿入して行う手術をします。この方法では、筒から各椎間板に人工椎間板を入れて、押しつぶされた椎間板腔を広げることで後弯に矯正します。さらに、腰の後ろからビスとロッドで矯正した角度を維持できるように固定します。なお、他の手術と同様に、手術に伴う血栓症や感染などが起こる場合がありますので、手術中だけでなく手術後も含め徹底した対策をとります。
いずれの手術方法においても、すべて全身麻酔で眠っている間に行いますので、手術中の痛みは感じません。
脊椎骨切り術
手術後のレントゲン