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背骨治療の専門医に聞いてみました

頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症による首の痛みや手足のしびれは神経が発信するSOSのサインです

山崎 昭義先生
社会医療法人仁愛会 新潟中央病院 院長
Dr. PROFILE
専門:脊椎・脊髄外科
資格:医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本整形外科学会脊椎内視鏡下手術 技術認定医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本脊椎脊髄病学会評議員、東日本整形災害外科学会評議員、日本脊椎インストゥルメンテーション学会評議員、日本腰痛学会評議員、新潟大学医学部臨床教授
Q
頚椎疾患を悪化させないために、日常生活でできる対策はありますか?
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やはり普段の姿勢が大事だと思います。側弯症になるような姿勢はよくないですし、横から全身を見た時の前弯や後弯のバランスも大事です。首だけに着目した場合は、なるべく正面を向いて反っている状態が望ましいですね。最近は「スマホ首」という言葉がありますが、スマホやパソコンの操作などで下を向く時間が増えています。下ばかり見ていると老化が早まりますから、デスクワークの人は時々手を止めて正しい姿勢に戻すことが重要です。それによって首が固まらず、首の後ろ側の筋肉を維持できるようになります。

Q
どのような状況の場合に手術が選択肢となるのでしょうか?

神経の麻痺が起きている場合ですね。あとは、夜眠れないくらいの痛みがある場合も手術を推奨することがあります。寝る時に楽な姿勢を見つけるのに苦労しますし、ようやく楽な姿勢を見つけても夜中に寝返りを打つとその度に痛みで目が覚めてしまい、生活の質が大きく落ちてしまうからです。それくらい病気が進んでいると痛み止めの薬も効かないことが多く、保存療法では改善が難しい可能性があります。あとは、手足の力が入らない場合や、素早い動きや細かい作業ができない場合も手術を検討する必要があると思います。箸やペンが使えるかどうか、ワイシャツのボタンがかけられるかなどが一つの目安になります。ちなみに利き手はよく使うので分かりやすいですが、そうでない方の手はご本人も自覚しにくい場合があります。

Q
後方アプローチによる手術について教えて頂けますか?
椎弓形成術
椎弓形成術
椎弓形成術
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手術では除圧といって神経の圧迫を解除することが第一の目的となります。また、頚椎に不安定性がある場合には、脊髄損傷のリスクを抑えるために金具を使って関節固定をします。後弯症などで頚椎の変形がみられる場合には、骨の並びを矯正する手術が選択されることもあります。
以前は頚椎の前方から手術を行う前方アプローチが多かったですが、最近は技術の進歩によって後方アプローチで脊髄や神経根の除圧が安全にできるようになっています。頚椎の前方には気道、食道、頚動脈、椎骨動脈といった生命に関わる臓器が多くあり、前方アプローチではそれらを避ける操作が必要になりますが、後方アプローチではそのような操作をせずに手術ができるという利点があります。除圧においては、脊髄を覆う屋根のような形をした椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部分を広げる椎弓形成術、椎間孔(ついかんこう)の周囲にある骨を削って椎間孔を広げることで神経根の圧迫を解除する椎間孔拡大術などの方法があります。

Q
以前と比べて進歩した医療技術があれば教えてください

椎間孔拡大術の場合、除圧をする範囲によっては内視鏡を使った手術が選択されることがあります。内視鏡を使った手術では皮切(傷口)を2cm程度にとどめることができ、従来の方法と比べて出血量を抑えられることから、患者さんの負担が少ないというメリットがあります。
ナビゲーションシステムは関節固定をする場合に有効な技術です。頚椎は構造物が小さく、わずか3~4mm程度しかない骨に直径3.5mm程度の金具を入れる場合もあります。正確に金具を入れないと周辺の動脈や神経に当たって損傷してしまう可能性があり、高い精度が求められるのです。ナビゲーションシステムは金具を入れる位置や向きが計画通りに行えているか術中に画面上で知らせてくれるシステムです。確認をしながら金具を挿入できるので、よりスムーズかつ安全に固定を進めることができます。車のナビゲーションと一緒です。
あとは、脊髄モニタリングも有用な設備です。術中に頭の上(頭頂部)にある運動神経を刺激し、脳から脊髄を介して末梢神経まで電気を走らせると手足がピクピク動きます。その反応を見ながら手術を行うことで、神経を傷つけずに除圧や固定を進めることができます。

Q
手術を受けるにあたり適応とならないケースはありますか?

たいていの方は手術を受けられますが、精神障がいや認知症の方で意思の疎通を取ることが難しい場合は手術ができないことがあります。あとはペースメーカーを使っていてMRI画像が撮れない方、腎機能障害がある方も手術が適応できない場合があります。尋常性乾癬などの皮膚疾患がある方は、感染症のリスクが高いため、先に皮膚の治療をしてから手術を検討されることをお勧めしています。