安野 雅統先生
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
整形外科医長 脊椎センター副センター長
資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会指導医
手術後は、容態に合わせて起立・歩行練習などのリハビリをすすめていきます。回復のスピードは年齢、病状経過、手術直前の運動機能などによりさまざまです。大切なのは、ご自身の運動機能を把握し、リハビリの目標を設定し、具体的なイメージを持つことです。たとえば、1ヶ月後には右手で杖を持って最寄りのスーパーまで買い物に行きたい。そのために、今日はリハビリ室で平行棒を用いた立ち上がり訓練・歩行練習を行い、病室では朝と夜の2回、起立訓練、下肢の筋力トレーニングをやってみよう、などといった感じです。こうした運動機能の維持・向上にむけた一連の流れをリハビリスタッフや医師がサポートします。
定期的な運動により身体機能が高まり、がんの治療自体も進めやすくなります。ぜひ、主治医の先生や整形外科医と相談の上、可能な範囲で体を動かしてみてください。骨転移により一度つらい痛みを経験すると、身体を動かすことに消極的になってしまう方が多くいらっしゃいます。一方、無症状であっても、転移性脊椎腫瘍と診断されると、運動は控えたほうが良いのでは、と考えてしまいやすいかも知れません。運動して大丈夫な状態なのか、どのような運動をしたら良いのか、身体を動かす際に何か注意するポイントはあるかなど運動器に関して気になることがある方は、ぜひ整形外科を頼っていただきたいと思います。
転移性脊椎腫瘍は早い段階で診断し、適切なタイミングで治療を導入することが大切です。患者さんとご家族が医師と十分に話して、病状や治療選択肢について理解し、納得した治療を受けることが重要です。つらい症状を放置してしまうと、診断の遅れから治療のタイミングを逸してしまうこともあり得ます。これまで経験したことがないような痛みやしびれが出現したときや、程度は軽くても症状が長く続くときなどは整形外科の受診をお勧めします。
最後に、がんの治療に整形外科医が関わることが増えてきています。活動性を維持して、ご自身が望む治療を継続的に受けられるように整形外科医がサポートできることがあります。運動器関連症状でお困りのことがあればぜひご相談ください。