背骨治療の専門医に聞いてみました
くび、腰、手足の痛み・しびれは 背骨の病気や神経の障害が疑われます
大きく保存療法と手術療法があります。背骨(脊椎・脊髄)の病気やケガでは、多くの場合、最初に保存療法が行われます。痛みや炎症がある場合は薬物療法を行い、牽引やマッサージ、温熱を当てるといった理学療法を行います。つらい症状がある程度収まって、もう少し積極的な治療が可能な段階になると運動療法が始まります。
むしろその逆です。もちろん、症状が進行しているときは安静が必要ですが、あまりにも大事にし過ぎていると組織がこわばってしまい、わずかな刺激でも痛みやしびれを感じるようになることもあります。運動療法が可能な段階になったら担当医師やリハビリの先生と相談しながら、積極的に運動療法に取り組んだほうがよいと思います。
特にしびれは保存療法で改善しにくい面があり、私は積極的な運動を勧めています。関節の固くなっているところをよく動かすとか、筋肉のバランスを整えるとか、少し汗をかくような運動がしびれの改善に役立つと考えています。
また、痛みは精神的なストレスで増幅することもあり、温泉やアロマテラピーなど様々な方法を試してみるのもおすすめです。
神経へのダメージがどんどん進行していると判断できる場合は、手術が選択肢に入ってきます。やはり神経は一度損傷すると元に戻りませんから、一定以上のダメージを受ける前に治療をして神経を守る必要があります。このままだと重篤な麻痺を生じたり、寝たきりになる恐れがある場合などは、積極的に手術に臨んだほうがいいと思います。
患者さん個々の状態によって改善の程度は異なりますので、正直なところ正確な予測は困難です。しかし、症状が改善することを目指して手術をするわけですから患者さんとしては、その手術によって自分のどういう問題が解決されるのか、主治医の先生からしっかり話を聞いて、十分に理解することが大切です。
それに加えて大切なことは、退院後のリハビリです。入院中は主治医やリハビリの先生の指導に従っていれば、ある程度のところまで回復への軌道に乗せてくれます。その後は、自分自身で積極的にリハビリに取り組んでいくことが大切です。リハビリの質や量は個々のケースで違いますが、大切なことはもっと良くなろうという意欲を患者さん自身が強く持つことです。主体性を持ってリハビリに取り組めば、主治医もいろいろなアドバイスをしてそれを応援してくれるはずです。
結んだ指をあごの下において、耳の位置が肩のラインと並ぶまで押す。
くびや腰、手足が慢性的に痛い、しびれるという人は、同じ姿勢を長時間続けているなど、知らず知らずのうちにくびや腰に負担をかけています。人は痛みや疲れが出ると、それに気づいて腕を回したり、腰を伸ばしたりすると思いますが、現代人はそれすら面倒でやらない傾向があります。特にスマートフォンやパソコンの操作で、あごが前に出て、くびが反っている状態を長時間続けている人が多い。これはくびに負担がかかり注意が必要です。
私は、くびの場合は、あご引き訓練をすすめています。腰の場合は、プールでの歩行を勧めています。
背骨は一本しかありませんから、大切なことは、いかに傷めないようにするかに尽きます。そのためには正しい姿勢と、それを維持する筋肉と運動、この3つの要素が基本です。それでも、加齢などで壊れて、痛みやしびれが出てくることがあります。いつまでも同じ症状が続いているとか、少しずつ悪くなっているのにもかかわらず、効果のない治療をいつまでも続けているのはよくありません。思い切って整形外科を受診してください。
整形外科にかかったからといって無理やり手術を勧められるようなことはまずありません。治療方法を選択するのは患者さん自身ですから、整形外科で自分の体の状態をしっかり把握し、医師からの治療提案も理解した上で、最適な治療に臨んでいただきたいと思います。
その意味では、いろいろな治療法の引き出しを持っている先生と出会えるのが患者さんのためになると思います。自分自身の体ですから、治そうという強い意志を持って、それを手助けしてくれる医師をうまく利用してほしいと思います。