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背骨治療の専門医に聞いてみました

くび、腰、手足の痛み・しびれは 背骨の病気や神経の障害が疑われます

三原 久範先生
横浜南共済病院
Dr. PROFILE
1987年滋賀医科大学医学部卒業。1989年横浜市立大学医学部整形外科入局。1997~99年米国ウィスコンシン大学留学。2003年~横浜南共済病院。現在は整形外科部長、脊椎脊髄センター長、診療部長。日本整形外科学会専門医、脊椎脊髄専門医、日本脊椎脊髄学会指導医
「くびが痛い」、「腰が痛い」、「手・足がしびれる」などの症状が起こる原因として、「背骨」や「神経」が関係している場合があります。脊椎脊髄の専門医で、治りにくいくび、腰の症例を数多く診療している横浜南共済病院の三原久範先生に痛みやしびれの原因、整形外科を受診するタイミング、日常生活の注意点などを教えていただきました。
Q
放置してはいけない痛みやしびれを教えてください。
病院へ行ったほうがよいのは、痛みやしびれが一週間以上続いている、痛みやしびれがどんどん強くなっている、広がるような痛みやしびれがあると感じられるような場合です。整形外科を受診するときには、「いつ頃から、どんな症状が出ているのか」、「一番痛かった、しびれていたときと比べて今はどうか」といったことを答えられるようにしておくと、医師のほうも病気の経過を判断しやすくなります。
Q
痛みやしびれが続いている期間や症状の変化が重要なのですね。
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そうです。例えば、腰の椎間板ヘルニアという病気は、発症してから一ヶ月くらいは強い痛みが出ますが、7割くらいの人は、それを過ぎるとスーッと痛みが消えていきます。くびの場合も、例えば頚椎症性神経根症では、くびから肩、腕にかけて電気が走るようなビーンとした痛みやしびれが出ます。これも最初の頃はものすごく痛いのですが、ある時期をすぎるとスーッと引き始めることがあります。逆に、痛みの悪性サイクルにはまってしまうと症状が増強する場合もあります。そうした症状の変化や期間を詳しく伝えてもらうと、医師にとって非常に大きなヒントになるのです。

Q
痛みやしびれはどうして出るのでしょうか?
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くびや腰は体の中でも負担のかかる場所であるため、痛みやしびれには背骨の病気やケガが関係していることがあります。背骨は、わかりやすく言うと、容れ物(コンテナ=主に骨)と内容物(コンテンツ=主に神経)で構成されています。容れ物が何らかの原因で壊れると、痛みがあらわれます。さらにそのダメージが内容物にまで及ぶと、しびれや重だるさといった不快な感覚の症状(神経症状)があらわれます。
私たちは痛みやしびれを脳で感じています。それを脳に伝える神経の伝達路で何らかのダメージが起こるとこのような神経症状が出始めますから、この場合は早めに受診したほうがいいでしょう。

Q
しびれがあるとき、何科を受診したらいいのでしょうか?
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しびれの原因は、背骨の神経(脊髄)の障害の他にいくつかあります。例えば、脳梗塞などの脳の病気、糖尿病や冷えによる血行障害でもしびれが起こることがあります。何科を受診するか迷うときは、しびれのある場所が目安になることがあります。例えば脳の病気の場合は、右半身か左半身のどちらか一方がしびれるのに加えて、顔や口のまわりにしびれが出やすいという特徴があります。また、糖尿病の人は、体の中心からより遠い場所の手足の指先などがしびれる傾向があります。さらに、脊髄が関係している場合は、顔より上にしびれが出ることはあまりなく、手足のほうに出やすい傾向があります。
それでも迷ってしまうときは、整形外科を受診するとよいと思います。整形外科は全身を総合的に診察しているので、しびれの原因を多角的にみて鑑別診断し、正しい方向に導いてくれると思います。

Q
しびれなどの神経症状があらわれたら、
すぐに病院へ行ったほうがいいのですね。
長距離を歩けなくなったとか、箸を上手に持てなくなったというように運動機能がどんどん落ちていると感じられる場合は、神経の障害が徐々に進行していると考えられますから、早めに受診することをおすすめします。
痛みやしびれはあるけれど、自分はどうなんだろうと思う方は、ご自分で運動能力を測って、記録していくといいと思います。例えば、くびの場合は、手指の屈伸(グーパー)が10秒間に何回できるかを数える「手指の屈伸10秒テスト」というのがあります。足については、私が考案したのですが、三角形の頂点を、10秒間に何回ステップできたかを数える「3点ステップテスト」をおすすめします。こういうものを定期的に自分で測定して、その回数が減っていくようなら、神経のダメージが明らかに進行していますので受診したほうがいいとわかります。また痛みやしびれといった感覚的なものは、どの程度のものなのか他人にはわかりづらいところがありますので、10点満点中のいくつというように数値化して伝えると症状の重さが分かりやすくなります。
手指の屈伸10秒テスト
3点ステップテスト