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背骨治療の専門医に聞いてみました

くびの痛みや手足のしびれ 我慢せずに専門医に相談を。まずは原因の見極めが大切です

梅林 猛先生
東京脊椎クリニック 院長
Dr. PROFILE
資格:日本脳神経外科学会専門医、日本脊髄外科学会認定医、日本脊髄外科学会指導医
所属学会:日本脳神経外科学会、日本脊髄外科学会、日本脊椎脊髄神経手術手技学会
くびの痛みや肩こり、手足のしびれに悩む人は、高齢者だけでなく幅広い世代で増えていると聞きます。特に最近では、長時間のうつむいた姿勢でのスマホやパソコンの使用も、くびに大きな負担をかけているとのこと。くびの病気は悪化すると、両手で細かい作業ができない、手足に力が入らないなど生活への影響が広がっていきます。今回は、東京脊椎クリニックの梅林先生に、痛みやしびれが起きる原因や、悪化させないために気をつけること、病院での治療方法などについてお話を伺いました。
Q
くびの痛みや手のしびれが起きる主な原因は何ですか?
脊柱管狭窄症
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くびが痛い、手がしびれるという症状は、頚椎(けいつい)に関係していることが少なくありません。頚椎の中には、脳からつながる長い神経が通っていて、何らかの原因でそれが圧迫されると痛みやしびれを起こします。代表的なのが、頚椎椎間板ヘルニアや頚部脊柱管狭窄症(けいぶせきちゅうかんきょうさくしょう)です。椎間板ヘルニアは、骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が飛び出て神経を押してしまうもので、主に30~50代などの人にみられます。脊柱管狭窄症は、神経の通り道である脊柱管が狭くなる病気で、加齢に伴って起きることが多いです。また、まれなケースでは、頚椎後縦靭帯骨化症(けいついこうじゅうじんたいこっかしょう)という、頚椎を縦につなぐ靭帯の一部が骨のように硬くなって脊柱管を狭くする病気もあります。原因はわかっておらず、国から難病に指定されています。こうしたくびに起きる病気を総称して、頚椎症(けいついしょう)と呼びます。頚椎を通る神経は、太い幹の部分・脊髄(せきずい)と、そこから細く枝分かれした神経根(しんけいこん)に分かれています。どちらが圧迫されているかによって、頚椎症性脊髄症と頚椎症性神経根症に区別されます。

Q
圧迫される神経の場所によって、症状の違いはありますか?

神経根が圧迫されると、主に片側のくびから肩、手にかけての痛みやしびれ、力の入りにくさを感じる患者さんが多いようです。一方、脊髄が圧迫されると、両手のしびれや、歩きづらさ、つまずきやすさなどを訴える患者さんが増えてきます。しかし症状は似ている場合も多く、断定はできません。また、CT画像やMRI画像などでみると、かなり脊柱管が狭くなって神経が圧迫されているのに、患者さん自身はあまり症状を感じないというケースもあります。問診や身体所見、画像検査などを合わせて総合的に判断していくことが欠かせません。
さらに、くびの症状では複数の病気を合併していることが多く、「この患者さんの病名はこれ」など単純に言い切れず、病態のどの側面を見るかで呼び名が変わります。「別の病院で診てもらうと、違う病名と診断された」といったことが起きるのはこのためです。いずれも問題は神経が圧迫されていることであり、病名だけにとらわれすぎないようにしましょう。

Q
悪化させないためには何に気をつけるべきですか?
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普段から正しい姿勢をとることを意識してください。最近では、毎日長時間スマートフォンやパソコンを使う人が増えています。前かがみ、うつむき気味の姿勢はくびや腰に大きな負担をかけます。若い人でもアライメント(脊骨の並び)が悪い人が急増しており、ご自身では大丈夫と思っていても、10年後、20年後に影響が出てくる可能性があります。例えば電車通勤している人であれば、ずっとスマホ画面を見ているのではなく、しっかりと背筋を伸ばし、なるべく窓の外の風景を見るように習慣づけてください。また、タバコを吸う人はできる限り早く禁煙するように勧めています。タバコに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させ、椎間板に十分な栄養が行き渡らなくなります。くびの悩みを抱える人にとって、禁煙はご自身でできる大きな生活改善のひとつです。

Q
痛みやしびれが自然に治ることもありますか?
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痛みやしびれの原因によっては、時間が経てば自然治癒するような場合もあります。例えば、他の病気を合併していない軽度な椎間板ヘルニアであれば、自然に治ることが多いです。また、椎間板ヘルニア以外でも、しびれなどの神経症状がないか軽度であれば、特別な治療をしなくても軽快することが少なくありません。気長に症状に付き合っていくようにして、その間痛みが強いようであれば痛み止めのお薬を飲んだり、場合によってはブロック注射を用います。安静にしすぎると筋力が低下して頚椎を支えにくくなりますので、適度に動かすことも大切です。担当医師に相談し、ご自身の状態に合わせた無理のないリハビリを指導してもらいましょう。